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東京地方裁判所 昭和36年(レ)381号 判決

控訴人 大島芳春

被控訴人 小鷹邦二

主文

原判決を取り消す。

被控訴人は、控訴人に対し、別紙物件目録(一)記載の土地を、その地上に在る別紙物件目録(二)記載の建物を収去して、明け渡せ。

訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

この判決は、控訴人において金三万円の担保を供するときは、仮に執行することができる。

事実

控訴代理人は主文同旨の判決を求め、請求の原因として

「控訴人は別紙物件目録(一)記載の土地(以下本件土地という。)の所有者であるが、被控訴人は正当の権限なく右土地上に別紙物件目録(二)記載の建物(以下本件建物という。)を所有し、控訴人の所有権を侵害している。よつて控訴人は被控訴人に対し、本件建物を収去して本件土地を明け渡すべきことを求める。

と述べ、被控訴人の抗弁に対し、

「本件土地、建物が、いずれも、もと訴外大島土地株式会社(以下訴外会社という。)の所有に属していたところ、被控訴人主張のとおりの経緯で、控訴人が本件土地の、被控訴人が本件建物の、各所有権を取得するに至つたこと及び控訴人が本件土地の所有権を取得する際、本件土地上に本件建物が存在しており、かつ、右建物が滞納処分による差押を受けていた事実を知つていたことは認めるが、その余は争う。

(一)  本件の場合に法定地上権が成立する余地はない。すなわち、まず昭和三五年一月一日施行の国税徴収法第一二七条には、土地及び建物が滞納者に属する場合において、その土地又は建物の差押があり換価により所有者を異にするに至つたときは、建物につき、いわゆる法定地上権が設定されたものとみなされる旨の規定があるが、右規定は、同法附則第一二条第三項において「この法律施行後に換価に付する建物について適用する。」とあるから、右法律施行以前である昭和三三年五月二三日に行われた本件公売には適用する余地はないわけである。次に被控訴人は、本件滞納処分による公売の場合にも民法第三八八条の規定が類推適用せられると主張するが、かゝる解釈は誤りである。なんとなれば、民法の右規定が設けられたのは、建物の存続には土地の使用が必要であり、しかも、土地建物が同一人の所有に属するときは、自己のため賃借権などの土地使用関係を設定する必要もなく、また法律上も不可能であるから、競売により土地と建物の所有者を異にするに至つたときは、建物所有者のため地上権を設定したものとみなして建物の存在を保護しようとする国家経済上の目的に出たものであることはもちろんであるが、他面、そのことが、抵当権設定当時の契約当事者の意図ないし期待に沿うものと考えられるがためにほかならず、単に公益上の理由のみによるものではない。従つて法定地上権の認められる場合は、抵当権設定の場合のごとく、物件の処分について当事者の意思の加わる余地のあるときのみに限られると解すべきであり、強制競売や滞納処分の場合のように、当事者の意思にかゝわらないでなされる手続の結果、建物と土地の所有者が分離される場合には、類推適用されるべきではないのである。もつとも、強制競売や滞納処分の場合といえども、その目的物件に抵当権が設定せられており、それが民法第三八八条所定の要件をみたしている場合においては、同条の規定を類推適用すべき余地はあるが、それはあくまで右のごとき抵当権が存在する場合のみに限られるのであつて、本件のように抵当権の設定のない場合には、同条の類推適用の余地はないのみならず、仮に同条の類推適用を肯定するとしても、同条は土地及び建物が競売にに至るまで同一所有者に属する場合においてのみ適用されるべき規定であつて、抵当権の設定ないしは差押の登記後、土地又は建物の一方が所有者により任意に処分された後、一方のみが、競売される場合にまで適用されるものではない。なんとなれば、この場合には、建物所有者と土地所有者との間において建物存立のため借地関係を設定することが可能となつているからである。従つて、建物の公売当時、土地が控訴人、建物が訴外会社と、それぞれその所有者を異にしていた本件においては、民法第三八八条を類推して法定地上権の成立を認めることはできない。のみならず、本件建物は物置同様の古小屋で、もともと取毀し収去を予定し、久しく空家となつていたところ、たまたま租税滞納による差押によつてその収去が延引していたものであり、特にその存立を保護するだけの価値のある建物ではなくしかも被控訴人は本件建物の所有権を取得した日から現在に至るまで、これを使用しているので、その代価を一ケ月金五、〇〇〇円と仮定しても、すでに公売代金である一一三、〇〇〇円の投下資本を回収してしまつており、また建物を取り毀したとしても、その材料は被控訴人の手許にとゞまるのであるから、被控訴人は、なんらの損害をも受けない。従つて、かような建物は民法第三八八条による保護を受けるに値せず、これに法定地上権を認めて敷地所有権を害することこそ、かえつて公益を害するものというべきである。

(二)  控訴人が訴外会社との間において被控訴人主張のような本件土地の使用貸借契約を締結した事実及び被控訴人が右訴外会社の本件土地使用権を承継し、控訴人がこれに承諾を与えた事実はいずれも否認する。仮にかような契約が締結せられたとしても、訴外会社は、その代表取締役である控訴人と契約したものであるところ、右契約については訴外会社の取締役会の承認がないから、右契約は無効である。また、仮にそうでないとしても、被控訴人主張の本件土地使用貸借契約上の権利の承継については、土地所有者たる控訴人の承諾がないから、右承継は控訴人に対し主張し得ない筋合である。

(三)  控訴人による本件土地明渡請求は権利の濫用ではない。すなわち、本件建物の収去によつて被控訴人が格別の損害を受けないことは、前記(一)において述べたとおりであるのみならず、そもそも本件建物の公売にあたつては、借地権がない旨の控訴人の届出が公売記録に編綴されていたから、被控訴人は右の事情を承知の上で本件建物の所有権を取得したわけであり、収去による損害は、もともと、その予期したところ、ないしは予期すべかりしところであつたといわなければならないから、これらの点を考えれば、控訴人の明渡請求がなんら権利の濫用にあたらないことは明らかである。」また、被控訴人は権原なく本件土地を占有しているものであるから、もとより地上物件たる家屋買取請求権発生の余地はない。

と述べた。

被控訴代理人は「本件控訴はこれを棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする」との判決を求め、答弁として

「控訴人主張の本件土地建物の各所有及び占有の事実は認める。」と述べ、抗弁として

「(一) 本件建物及びその敷地である本件土地は、もと、いずれも訴外会社の所有に属していたものであるところ、右訴外会社の租税滞納のため、昭和二九年九月六日、本件建物のみ東京国税局長の滞納処分による差押を受け、同月一〇日その旨の登記がなされ、昭和三三年五月二三日被控訴人が公売において売却決定を受け、その所有権を取得し、一方本件土地は、本件建物に対する右差押の後である昭和二九年一二月七日訴外会社から訴外井村徳二に譲渡され、更に昭和三一年一月三一日控訴人が同訴外人から譲渡を受けてその所有権を取得したものであるが、右のように同一人の所有に属する土地とその土地上の建物のうち、いずれか一方が滞納処分による差押を受け、公売の結果、土地と建物が別々の人の所有に属するにいたつた場合においては、民法第三八八条の規定を類推し、建物所有者のため、その敷地に法定地上権が成立するものと解すべきものであるから、被控訴人は、本件建物の所有権を取得したと同時に、その敷地である本件土地につき地上権を取得したものであり、これに基いて右土地を占有しているものである。

(二)  仮にしからずとするも、控訴人は昭和三一年一月三一日本件土地を訴外井村徳二から譲り受けた際、訴外会社との間において、本件建物所有を目的とする本件土地の使用貸借契約を締結し、被控訴人は昭和三三年五月二三日本件建物の所有権を前記公売により取得すると同時に、訴外会社の本件土地に対する右契約上の使用権を承継したのであるが、控訴人は本件土地所有権を取得した際、本件土地上に本件建物が存在すること及び同建物が滞納処分により差押を受けており将来公売に付されることを知悉しており、いわば、将来において右建物が第三者の所有に帰することを予期しつゝ、本件土地を買い受け、これと同時に、当時の建物所有者との間に本件土地の使用貸借契約を締結したのであるから、控訴人は、公売により本件建物の所有権を取得する者に対して敷地の使用権が承継されることを暗黙に承認していたものというべきであり、したがつて被控訴人に対し、引き続き本件土地を使用せしめる義務がある。

(三)  仮にかゝる義務が法律上認められないとしても、少くとも、右のごとき事情の下において被控訴人が控訴人に対し本件建物の収去、土地明渡しを求めるのは、専ら被控訴人に損害を与えることのみを目的とするもので、土地所有者としての権利の信義誠実に従つた行使とはいえないから、権利の濫用であつて許されない。

(四)  以上の主張が、いずれも理由がないとしても、借地法第一〇条の建物買取請求権は、使用貸借における借主の権利の譲渡の場合にも認められるものと解すべきところ、被控訴人は、前記のとおり、本件土地使用権とともに本件建物の所有権を取得したので、昭和三五年五月六日の原審口頭弁論期日において本件建物の買取を請求した。そして本件建物の時価は一一五、〇〇〇円であるから、その支払と引換えでなければ本件土地を明け渡すことはできない。」

と述べた。

証拠として控訴代理人は、甲第一、二号証、第三号証の一ないし四を提出し、原審証人河瀬清の証言及び当審における控訴人本人尋問の結果を援用し、乙号各証の成立は、いずれも知らないと述べ、被控訴代理人は、乙第一号証、第二号証の一、二、第三、第四号証を提出し、当審における証人小鷹太一の証言を援用し、甲号各証の成立はいずれも認めると述べた。

理由

本件土地が控訴人の所有に属しており、被控訴人が右土地上に本件建物を所有して右土地を占有していることは当事者間に争いがない。よつて、被控訴人の抗弁につき、以下に順を追つて検討する。

被控訴人は、まず、本件建物が国税滞納処分により差押を受けた当時、右建物とその敷地たる本件土地は、ともに訴外会社の所有であり、被控訴人は、右差押に基づく公売処分によつて本件建物の所有権を取得したものであるから、民法第三八八条の規定の類推適用により、本件土地につき法定地上権を取得したと主張する。

よつて右のごとき場合に民法第三八八条の類推適用を認むべきかどうかを判断するに、当裁判所は次の理由によりこれを否定すべきものと考える。

すなわち、この場合にも民法第三八八条の規定を類推適用すべきものとする論者は同条の立法趣旨を主として建物の維持存続の保護という国家経済的目的にあるものと解する立場に立ち、およそ建物は、その敷地の使用を離れては存立しえないのであるから、いやしくも土地の上に建物が存在するときは、該土地の所有権の内容は、建物所有のための法益とその余の法益とに分離せられるものということができ、土地及び建物が同一人の所有にとどまつている間は、右の分離は単に潜在的な関係としてとどまつており、またとどまらざるを得ないが両者がその所有者を異にするにいたつた場合には、右の分離が建物所有のための土地使用権の設定として顕在化するにいたるのであつて、所有関係の分離が土地建物の所有者による物件の譲渡によつて行われる場合には、通常、当事者間の契約によつて、使用権の設定という形により顕在化することができるから、法律上これにつき格別の手当をする必要をみないが、かゝる分離が、所有者の意思に基づかないでなされる場合には、必ずしも右のごとき当事者間の契約による使用権の設定を期待することができないので、この場合には、法律により、当事者の意思にかかわらない土地使用権の設定を認め、それによつて、地上建物の存立の保護をはかる必要がある。民法第三八八条はかかる目的のために、主として抵当権実行の場合に着眼して設けられた規定であるから、この趣旨にかんがみるときは、同条は、ひとり抵当権の実行の場合のみならず、抵当権と関係なく、強制競売や滞納処分によつて、土地と建物の所有者が、それぞれ分離するにいたつた場合にも、ひとしく類推適用せらるべきであると説くのである。しかしながら、民法第三八八条の規定の立法趣旨を右のごとく単に建物の存立の保護という国家経済的目的のみにあるものとし、同条の有する他の立法趣旨、すなわち、土地及び建物の所有者及び抵当権者が、その土地上に建物が存在するままの状態を維持しつつ、土地又は建物の有する担保価値を適正に利用しようとしているものであるとの当事者の意思の推測の点を無視するのは、正当な解釈ということができない。がんらい、土地建物の所有者は、その土地及び建物を自由に処分しうるのが建前であつて、土地上にある建物の存立を維持するかどうか、土地の使用を建物の敷地としての目的に限定するかどうかは、原則として所有者の自由意思に委ねられており、土地所有者は、地上に建物を建設したからといつて、その建物を国家経済上の見地から維持しなければならない拘束を受けるわけではないのである。たゞ土地所有者が、その土地又はその上にある自己所有の建物のいずれか一方を抵当権の目的とした場合には、右所有者及び抵当権者は土地上に建物が存在するままの状態を維持しつつ右の土地又は建物の有する担保価値を適正に利用しようとする意思を有しているものと推測せられるから、かかる場合には、右の抵当権設定の事実と時点をとらえて、右建物のために潜在的な土地使用権を認め、将来、所有者の意思によらないで、土地を建物の所有者が分離するにいたつた場合に、右の潜在的関係を顕在化するものとすることが妥当であると考えられるので、民法第三八八条はかかる見地から法定地上権の制度を採用したものと解するのが相当である。いいかえれば、同条は、あくまでも、抵当権の設定という、所有者の自発的意思に基づく行為を媒介として、法定地上権の制度を設けたのであり従つて、これを、土地と建物のいずれか一方又はその双方が抵当権の目的とせられた場合において、その所有者の意思に基づかないで右建物と土地の所有関係が分離するにいたつた場合にまで類推適用することは、その制度の趣旨からみて肯定すべきであろうが、これを超えて、およそ土地上に建物が存在する場合には、所有者の意思の介入の余地の有無にかかわらず常に建物のために潜在的な土地使用関係を認めようとしたものと解し、抵当権の設定とは無関係に強制競売や滞納処分によつて土地と建物の所有者が分離するに至つた場合にも適用があるものとすることは当を得たものということはできない。(もつとも民法第三八八条による法定地上権の成立は当事者の合意によつても、これを排除することを得ないものと解すべく、その限度においては、所有者の意思は、拘束を受けているといえるが、このことは、すこしも、上記の結論を左右するものではない。)もとより右のような場合にも広く法定地上権を認めることは、立法論としては十分に考慮に値することであり、現に新国税徴収法(昭和三四年法律第一四七号)は同法に基づく滞納処分の結果、土地建物の所有者が分離するにいたつた場合について、法定地上権の成立を認めているが、右規定は同法の施行前に公売が完結した本件の場合には適用がなく、また同法がかかる規定を設けたこと自体、同法施行前においては、かかる場合に法定地上権の成立が認められなかつたことを示すものといえるのであつて、この場合に法定地上権の成立を認めるのが立法論として適当であるということは、決して民法第三八八条の規定を被控訴人の主張のような解釈すべしとする根拠となるものではない。もつとも、前述のように、強制競売ないしは滞納処分によつて土地及び建物の所有者が分離するにいたつた場合においても、差押以前において土地又は建物のいずれかに抵当権の設定登記がなされていた場合には、民法第三八八条を類推適用して法定地上権の成立を肯定するのが妥当であろうが本件においては、土地および建物のいづれについてもかゝる抵当権の設定はなされていないのであるから本件建物の公売によつてその所有権を取得した被控訴人のために本件土地につき法定地上権の成立を、認める余地はないといわなければならない。故に被控訴人の前記主張は、理由がないものと排斥をまぬかれない。

次に被控訴人は、訴外会社と控訴人との間において昭和三一年一月三一日に成立した本件建物の所有を目的とする本件土地の使用貸借契約上の権利を本件建物の所有権を取得すると共に承継した旨主張するので、判断するに、控訴人が、本件土地の所有権を取得した昭和三一年当時、本件土地上に訴外会社所有の本件建物の存在していることを知悉していたとの事実については、当事者間に争いはないが、原審証人河瀬清の証言及び当審における控訴人本人尋問の結果によれば、本件建物は、もと本件土地から十数間を距たる他の土地上に存在したものを、該土地の必要上訴外会社が一時的に本件土地上に移転したものであり、本件土地を訴外会社から譲り受けた訴外井村徳二から再三その収去を求められていたが、本件建物が滞納処分により差押を受けていたために、訴外会社は、そのまま本件建物を本件土地上に放置していたもので、その後、井村が、右建物の存在のため本件土地の利用が不可能であるところから、訴外会社の代表者である控訴人に本件土地を売り渡した後においても、右の関係は格別改められることがなかつたことが認められ、他にこれを左右すべき証拠はない。そうだとすると、控訴人と訴外会社との間に、本件土地につき明示の使用貸借契約が締結せられた事実のないことはもちろん、控訴人が本件土地上に本件建物の存在することを知つておりながら、その収去についてなんらの措置をとらなかつたことから、訴外会社との間に暗默の使用貸借契約の成立があつたものと推断することもできず、他にかゝる契約の成立を認めしめるに足る証拠はない。それ故、被控訴人の使用貸借契約上の権利に基づく占有の抗弁は、その余の点にふれるまでもなく失当である。

よつて進んで、被控訴人の権利の濫用の抗弁について判断するに、控訴人が本件土地の所有権を取得した当時、右土地上に本件建物が存在し、かつ、それが国税滞納処分による差押を受けていた事実を知つていたことは当事者間に争いがないが、かゝる事実を知つて土地の所有権を取得した者が、建物を競落した第三者に対し、右建物の収去とその敷地の明渡を求めたとしても、他に特段の事情のない限り、これをもつて信義則に反する所有権の行使であるとはなし難いし、(ことに成立に争いのない甲第三号証の一ないし四と、当審における控訴人本人尋問の結果によると、控訴人は、本件建物の公売期日前に、文書をもつて、本件土地には本件建物のための賃貸借関係はなく、競落人に対して本件土地を賃貸する意思もないことを公売機関に対して通告していたことが認められるのである。)控訴人と被控訴人の前主である訴外会社との間に、本件建物のため本件土地につき使用貸借関係が設定せられていた事実がなかつたことは上記のとおりであり、したがつて、ことさらに、被控訴人に対して使用貸借関係の承継を認めなかつたという事実があつたわけでもなく、その他に控訴人の本件土地明渡請求が権利の濫用であるとするに足りる事実は、どこにもみあたらないから、被控訴人の右主張も採用することができない。

最後に、被控訴人の買取請求権の行使の抗弁について判断するに、訴外会社と控訴人との間に、本件土地につき建物所有のための賃貸借はもちろん使用貸借関係も存在していなかつたことは前記のとおりであるから、借地法第一〇条の規定の適用ないし類推適用の余地はなく、したがつて右抗弁も、その余の点に立ち入るまでもなく失当として排斥をまぬがれない。

以上の次第で、被控訴人の抗弁は、いずれも理由がなく、被控訴人に対し、本件土地の所有権に基づき、右土地に対する被控訴人の不法な占有を排除するため、本件建物の収去と本件土地の明渡しを求める控訴人の本訴請求は、正当であるから、これを認容すべく、これを棄却した原判決は取消しをまぬがれない。

よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を、それぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 位野木益雄 中村治朗 大関隆夫)

物件目録

(一)、東京都三鷹市深大寺字居村参千九百参番の参六

一、宅地 四拾四坪五合五勺

(二)、(登記簿上)東京都三鷹市深大寺字居村参千九百参番の壱

家屋番号 同所弐八番五

一、木造瓦葺平家建居宅 壱棟

建坪 拾四坪七合五勺

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